
テザー問題のキーマンが辞任を発表
今月22日、仮想通貨取引所ビットフィネックスと、同社の提携企業であるテザー社でCSO(最高戦略責任者)を務めるPhil Potter氏が辞任を発表したとロイターが報じました。
ロイターによると、Potter氏は「ビットフィネックスがアメリカを出ることで、アメリカ人として責任者チームにあるポジションを考え直すタイミングが来た」と述べ、解雇でなく自主的に会社を去るそうです。
ビットフィネックスとテザー社は、仮想通貨テザーをめぐる一連の「テザー問題」で注目を集めており、そのキーマンとなるCSOの辞任によって、両社に今後どのような動きがあるのか注目が集まっています。
あらためて「テザー問題」とは
ここで今一度、テザー問題について振り返ってみます。
テザー(Tether/USDT)とは、法定通貨である米ドルと連動した価値を持つ仮想通貨です。
大半の仮想通貨が激しい価値変動の影響を受けやすいなか、テザーは米ドルと連動し、1USDT=1USDで取引できるように価格が安定しており、不安定な仮想通貨の世界において基軸通貨に似た役割を果たしています。
しかし今年1月、テザーを発行するテザー社が、裏付けとなるドル資産を持っていないとの疑惑が浮上し、米商品先物取引委員会(CFTC)が調査していることが判明しました。
流通するテザーの総額が、テザー社の保有する米ドルの総額と合致していなければ、理論上はテザーがいくらでも通貨を発行できることになるため、外部監査を通じて米ドルの準備高を証明するよう投資家から求められていました。
しかしテザーはその要求に応じず、同社の監査法人との契約をわずか1ヶ月で打ち切ってしまったのです。
さらに今月13日、米テキサス大学のジョン・グリフィン教授のチームが、「テザーがビットコインの価格操作に使われた可能性がある」という衝撃的な論文を発表しました。
論文には、ブロックチェーンの台帳に記録された数百万件の取引記録を解析した結果、昨年起きたビットコインの価格上昇のうち、少なくとも半分以上でテザーの新規発行と価格上昇の間に相関関係が認められたと述べられています。
これがいわゆる「テザー問題」です。
テザー社がついに報告書を発表
テザーに対する疑惑が深まる中、今月20日、テザー社がついにテザーの米ドルによる裏付けに関する報告書を発表しました。
この報告書は、ワシントンDCに拠点を置く有力弁護士事務所、Feeh Sporkin & Sullivan LLP によるもので、「透明性の最新情報」と題し、テザー社の一連の疑惑に対する弁明と、同社の立場を表明した声明の中に含まれています。
報告書には、2018年6月1日時点で市場に出回っているテザーの総量と、テザー社所有の二つの銀行口座における同日の米ドル保有残高を証明されています。
・6月1日時点のテザーの市場流通総量:2,538,090,823.52ドル
・銀行口座A:1,968,538,584.82ドル
・銀行口座B:576,528,652.00ドル
合計:2,545,067,236.82ドル
しかしこの報告書は、公認会計事務所による正式な監査を経たものではなく、また6月1日の残高に対する証明に限られており、6月1日前後にテザー社が発行したテザーに対して引当金を担保していることは保証していません。
テザーに対する疑惑は晴れず
この発表により、テザーに対してある程度の米ドルの裏付けがあることは判明しましたが、テザー社に対する疑念が完全に晴れたわけではありません。
この報告書は、公認会計事務所による正式な監査の代わりを果たすものではなく、あくまで代案に過ぎず、テザーによるビットコインの価格操作疑惑は依然として解明されていません。
そんな中、今月26日にはテザー社が再び2.5億USDT(270億円)と大量のUSDTを発行し、前回大量発行した5月18日と同じように、ビットコイン価格は短時間で約150ドル上昇しています。
まさに「やりたい放題」の状態が続いていますが、CSOの辞任によって疑惑が晴れるどころかますます深まっています。
個人投資家に見放され、仮想通貨市場が冷え込んでしまう前に、一刻も早い疑惑解明が望まれます。
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