
おそロシアの経済を左右する3つの要素とは?
2018年に入り大統領選挙(3月18日)とサッカーワールドカップ(6月14日~7月15日)という大きなイベントを無事終了させたロシア。1カ月間にわたりワールドカップの観戦に訪れた外国人は15億ドル(約1685億円)を支出したとも言われている。このような特別な経済効果以外は、通常はロシア経済を左右させるのは、基本的に大きく分け3つの要因に起因する。
天然資源の価格
1つ目は原油価格。
ロシア経済は石油・天然ガスなどの天然資源に経済的・財政的に大きく依存しており、2000年代以降、中国をはじめとする新興国の石油需要の拡大を背景に原油価格の上昇が続いたため、平均7%を上回るプラス成長が続いていたが、2008年のリーマンショックにより石油需要が落ち込むと、原油価格は急落し、2009年のロシア経済はマイナス7.8%にも転じた。
その後、中国の大型景気刺激策による新興国の需要回復と先進国の大規模な金融緩和に伴う緩和マネーの原油市場への流入によって原油価格が急騰し、ロシア経済はプラス3~4%に持ち直した。再び2011年半ばから新興国経済が減速に転じるとともに、米国のシェールオイル増産によって石油の需給が緩和されると、2014年末には原油価格が急落、2014 年 1 月から 2016 年 1 月までの 2 年間で、ルーブルの為替相場は半分以下に下落している。
欧米諸国による対ロシア経済制裁
2つ目は欧米諸国による対ロシア経済制裁だ。
今年3月のイギリスでの元ロシア情報院殺人未遂をきっかけとしたロシア人外交官の各国からの追放は記憶に新しいが、経済制裁としては2014年3月ロシアがウクライナのクリミア半島を併合、欧米諸国はロシアに対して金融取引や輸出入関連の経済制裁を発動し、ロシアも報復措置を講じた。
欧米による対ロシア経済制裁は、特定のロシア企業に対して中長期のファイナンスや新規油田開発用技術・機材の 提供を禁止することが主である。
欧米諸国の経済制裁がロシア経済に与えた影響度合いについては専門家の中でも意見が分かれているが、ニッセイ基礎研究所のレポートでは、ロシアが報復措置として欧米諸国からの農産物輸入を禁止した結果、国内での食料品価格が高騰し、消費が低迷する一因となったとしている。
天然資源以外の産業
3つ目は、今後のエネルギー以外の産業の発展だ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートによると、ロシアの産業は、兵器産業に関しては世界有数の力を持つが、民生産業は発展途上国レベルにとどまっている。
民生産業が振るわない最大の理由は、旧ソ連の社会主義経済時代が長すぎた後遺症で市場経済への移行が十分に進んでおらず、国営企業が未 だに大きな影響力を持っていることなどだ。
従ってこの問題を短期間で解決するのは難しく、ロシア経済は、今後回復したとしても低成長が続く可能性が高いとしている。それでも日本と北方四島における海産物や果物の温室栽培や、風力発電などの共同経済活動に取り組んでいくなど、自国産業での刷新を図っている。
今後のおそロシア経済見通しまとめ
今後のロシア経済は、輸出入は、引き続き内需の拡大によって輸入が増加するも、原油価格が輸出額を大幅に上下し安定性は見込めないとされている。
少なくとも欧米諸国からの資源関連技術の流入停止は、中長期的には国内産業の成長の制約要因にもなる。
今後どれだけ自国産業を環境下で発展させられるかを長期的に見ていく必要があるとともに、今後も地政学リスクや原油価格動向によって左右される点に注意が必要である。
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