
日本発の「ユニコーン」、メルカリが抱える懸念材料
過去に何度も上場の噂が取り沙汰されてきた日本最大のフリマアプリ運営企業「メルカリ
が、いよいよ6月19日に東証マザーズ市場に上場します。
メルカリは、日本発の希少な「ユニコーン」(評価額が10億ドル=約1,000億円以上の企業をさす言葉)の1社として、今年の新規株式公開(IPO)の最大の目玉といわれてきました。
上場の想定仮条件の上限となる1株あたり2,700円で算出すると、時価総額は最大で3,730億円になります。
東証マザーズの時価総額トップであるミクシィの時価総額が2,707億円ですので、メルカリが株式公開を果たした段階で東証マザーズの時価総額1位銘柄となることは確実です。
順調と思われていた業績だが・・・
前途洋々に見えるメルカリですが、2つの懸念材料を抱えています。
その一つが企業業績です
メルカリが今回の有報提出前に業績を開示したのは2016年11月の決算公告で、その際に開示した2016年6月期業績は、売上高が122億5600万円(2015年6月期は42億3800万円)、営業損益は32億8600万円の黒字(同11億400万円の赤字)、純損益は30億円1100万円の黒字(同11億500万円)でした。
黒字転換に加えて営業利益率が30%近くにも達しており、ユーザー数の増加によってさらなる利益拡大が期待されていました。
しかし今回の有報で確認できた2016年6月期業績(連結)は、売上高が122億5600万円、営業損益が4200万円の赤字、純損益が3億4800万円の赤字で、2017年6月期(連結)は売上高が220億7100万円と伸びたものの、営業損益は27億7500万円の赤字、純損益は42億700万円の赤字に悪化し、今期の2018年6月期業績は、3Q累計(7~3月期)で売上高が261億4700万円、営業損益は18億9600万円の赤字、純損益は34億3400万円の赤字となっています。
以前公表していた決算公告は単体ベースの業績で、今回開示された有報では連結ベースという違いがありますが、これほどの赤字計上は投資家にとって想定外でしょう。
海外事業収益化への道は険しく
連結赤字となった要因は、主に海外への積極投資による広告宣伝費の増加です。
英国では、ユーザー数を拡大するために出品手数料を無料にしている段階で、黒字化にはまだまだ時間がかかります。
米国では2016年10月から手数料を徴収しており、ユーザー数と流通総額が拡大して一定規模に到達すれば黒字化できると見込んでいますが、2017年6月期の単独ベースの売上高(日本事業)212億円に対し、連結ベースの売上高(海外事業含む)は220億円とさほど変わっていません。
米国のフリマ市場では、日本以上に強力なライバル達がしのぎを削っており、海外事業収益化への道のりは想像以上に険しそうです。
法令遵守による成長鈍化も
もう一つの懸念材料が、法的リスクです。
メルカリでは、かねてから盗品やブランドの模造品など、違法・規約違反商品の出品が相次ぎ、なかでも現金の出品は大きな社会問題になりました。
現金の出品とは、例えば5万円が5万7千円で出品されていたりするケースですが、これはクレジットカードのショッピング枠の現金化を目的としたものです。
※すぐに現金が欲しいという需要に対応して、出品されていました。クレジットカードのキャッシングに比べてショッピング枠は審査が緩いので、狙われたようです。
現金の出品はすぐに禁止されましたが、その後もチャージ済みのSuicaやパチンコの景品などの換金性の高い商品が出品され、現在も運営側の規制とのイタチごっこが続いています。
メルカリの上場承認に時間がかかったのは、こうした「グレーゾーン商品」の出品が相次ぐメルカリに、金融庁が難色を示したからだといわれています。
株式を上場すれば、法令遵守の徹底によるコストが増加し、取引ルールの厳正化によりフリマ事業の成長が鈍化することも考えられます。
近年では、脚光を浴びたスタートアップ企業の業績が上場後に悪化し、株価が低迷する「上場ゴール」も目立っています。
メルカリが、日本発のユニコーン企業として上場後もさらなる成長を続けるのか、それとも「上場ゴール」で終わってしまうのか、その経営戦略に大きな注目が集まりそうです。
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