
日経バブル後最高値更新、ドル円114円台に突入の理由
9月18日、中国政府は米国からの輸入品に600億ドル(約6兆7,000億円)相当の追加関税をかけると発表しました。
これは、同月17日にドナルド・トランプ大統領が中国製品に2,000億ドル相当の追加関税を発表したことに対する報復措置です。
中国は今回、トランプ氏の支持基盤となっている州で生産されている液化天然ガス(LNG)などを新たな関税対象としました。
トランプ氏はこれに対しツイッターで、「中国政府は11月に控えた米国の中間選挙に影響を与えようとしている」と警告しました。
今回の3回目となる対中追加関税により、中国の対米輸出品およそ半分が追加関税の対象となりましたが、トランプ氏は中国が報復措置に出た場合、さらに2,670億ドル相当の中国製品への関税をかけると警告しています。

トランプ大統領は、ツイッターで
””「デ・モイン・レジスター」やら他の新聞に、中国がニュース記事に見せかけたプロパガンダ宣伝を載せている。貿易について我々の打った手が効いているからである。事が済めば、市場は開放され、農家には大金が落ちるのだ。””
などと述べ、追加関税に関して手ごたえを感じてるようだ。
10月初のマーケットは「リスク・オン」の動き
米中による貿易戦争が激化すれば、輸入物価の上昇により両国の個人消費が停滞し、経済大国である米中の需要が低迷すれば、世界経済全体に大きな影響を及ぼします。
また、世界的に景気が悪化すれば、相対的に安全な通貨とされる円が買われ、円高が進めば日本企業の輸出の採算悪化にもつながることから、輸出主導型の日本経済への影響も避けられないでしょう。
しかし、各国とも株式市場は上昇を続け、日本では日経平均が年初来高値を更新してバブル崩壊後の最高値圏が続き、また為替市場では円安が進行するなど、いわゆる「リスク・オン」の動きとなっています。
「貿易戦争の激化」と「金融市場でのリスク・オン」という、相反する動きになっている理由は一体何でしょうか。
「好調な企業業績」と「関税率の引き下げ」がリスクオンへの引き金
一つ目の理由として考えられるのが、景気や企業業績が好調なことです。
単純なことですが、実体経済の裏付けがなければここまでのリスクオンは実現できなかったでしょう。
日本の4-6月期国内総生産(GDP)は前期比年率3%と好調で、また発表を終えた4-6月期の決算も良好で、大手証券各社は日本企業の2018年度の業績見通しを二桁増益に上方修正しています。
二つ目の理由が、「関税率の引き下げ」です。
3回目の対中追加関税は、約2,000億ドル相当の中国製品という規模は変わらないものの、8月初旬に発表していた関税率25%を約10%に引き下げました。
関係者の話によると、関税率が当初の25%から約10%へと引き下げられた理由は、大規模な公聴会や、関税の影響を受けそうな輸入業者などの意見書が寄せられたこと、そして年末のホリデーシーズン商戦を前にしてアメリカの消費者のダメージを軽減しようとする配慮があったとされています。
投資家から見て、関税率が年内いっぱい10%に抑えられたことが現実的な妥協点を模索する姿勢と理解され、株が買われて安全資産である債券が売られる動きにつながっています。
対抗手段の中国保有の米国債売り・人民元安誘導はありえるのか

今のところマーケットでは、米中貿易戦争による「株安・債券高」の警戒感は薄く、楽観的な見通しに支配されています。
市場が米中貿易戦争に本当に警戒感を示すシナリオとしては、
なりふり構わぬ人民元安誘導
この2つの可能性がありますが、これは副作用が中国経済に跳ね返るのは確実で、非現実的といわざるを得ません。
しかし、貿易戦争は世界経済全体にとっては明らかにネガティブであり、根本的には「株安・債券高」の材料だという基本線には変わりありません。
対中追加関税の実施は、11月の米中間選挙の数週間前に発効する見通しですが、トランプ大統領の次の一手を正確に読める人は誰もおらず、トランプの本音を測りかねた米年金基金などは足元で模様眺めを決め込んでいるようです。
このところの「株高・債券安」は、リスク要因を軽視しすぎている感が否めませんが、金融政策の方向転換などによって一気に「株安・債券高」に動く可能性も十分考えられ、マーケット関係者はこの先も情勢見極めを図る必要に迫られそうです。
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