
トランプ大統領を勝利に導いたケンブリッジ・アナリティカの潜在能力
今年3月に報じられた、フェイスブック利用ユーザー約8,700万人分のデータが英国の選挙コンサルタント企業のケンブリッジ・アナリティカ(以下、CAと表記)に不正利用されていたというニュースは、米国と英国を震源地として大問題へと発展しました。
この問題により、フェイスブックの株価は3月16日の引け値185.09ドルから1週間で159.39ドルまで-13.9%急落しましたが、それよりも世間の注目を集めたのがCAという企業の存在です。
CAは2016年の米大統領選挙でトランプ陣営のコンサルティングを担当し、ビッグデータに心理分析を加えた戦略でトランプを勝利に導き、トランプ大統領誕生の影の立役者といわれています。
ケンブリッジ・アナリティカを支持する意外なスポンサー
CAの戦略は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にあふれる大量の情報を基に心理学分析を施し、プロパガンダ(世論誘導)に用いるというものです。
CAの手にかかれば、フェイスブックの「いいね!」ボタンの結果を150個、300個と重ねて分析することにより、学歴、知能程度、宗教、酒やタバコを好むか、麻薬を使っているかということから、21歳までに両親が離婚しているかどうかさえわかるといわれています。
CAは、イギリスのBrexitの選挙結果にも影響を与えたといわれていますが、フェイスブックユーザーの情報を本人の同意なしに取得・保持し、そのデータを使って世論を操作する手法に大きな批判が集まっていました。
そんなCAに、意外なスポンサーがいることが判明しました。
約4兆円を運用する世界有数のヘッジファンド、ルネッサンス・テクノロジーズのCEOであるロバート・マーサー氏です。
マーサー氏はCAの最大出資者で、CAに1500万ドル(約15億9000万円)の資金を援助したことがわかっています。
ルネッサンス・テクノロジーのアルゴと一つの疑念
ルネッサンス・テクノロジーズは、最先端のアルゴリズムを駆使してあらゆる投資対象の価格変動パターンを予測し、短期売買を集中的に積み上げる手法を得意としています。
また、ルネッサンスは日本の株式市場でも猛威を振るっていますが、手がける銘柄は時価総額が小さい新興銘柄が中心で、特定の銘柄を大量購入して急騰させて個人投資家が群がってきたところで売り抜けるというパターンがほとんどです。
なぜルネッサンスが時価総額の小さい新興銘柄ばかり売買し、仕手筋のような手法で売買しているのかは誰にもわかりません。
ルネッサンスにとって、アルゴリズムは秘伝のタレのようなものであり、その中身は外部の人間が覗くことのできない「ブラックボックス」になっているからです。
しかし今回、ルネッサンスとCAの関係性が明るみになったことで一つの疑念が生じます。
もしかしたら、ルネッサンスのアルゴリズムにCAの分析データが使われているのではないでしょうか?
ケンブリッジ・アナリティカの分析データをアルゴに組み込むとしたら
もちろん、CAにはマーサー氏が個人的に支援しているだけで、ルネッサンスとCAは関係ない可能性もあります。
しかし、ルネッサンスとしてはCAの持つ分析データは喉から手が出るほど欲しいはずで、もしルネッサンスのアルゴリズムにCAの分析データが使われていたとすると、ルネッサンスの謎めいた売買手法にも合点がいきます。
SNSにあふれる大量の情報から個人投資家が注目している銘柄を割り出し、大量売買で急騰を演出して煽り、個人投資家が群がってきたところで売り抜けるというやり方は、一見すると仕手筋のような投資手法ですが、その手口はフェイスブックユーザーのデータを使って世論を操作したCAのやり方そのものです。
これまでヘッジファンドのアルゴリズムといえば、株の値動き・出来高などの過去データから株価の変動を予測するものが主流だと思われていました。
しかし、それはすでに時代遅れで、人間の感情や心理を分析し、行動を誘導するレベルまで進歩しているのかもしれません。
コメントを残す