
EUの新たな火種 ~イタリア連立政権の行方~
イタリアでは3月の選挙後、どの政党も過半数を獲得できず、連立の組合せを模索し続けていましたが、ここへきてまさかの組合せとされていたポピュリスト2政党の連立が合意となり新たな政権がスタートすることになりました。
反エスタブリッシュメント政党『五つ星運動』と反移民政党の『同盟』が、オンライン上で開示しているこの新政権の政策は、EUの方針と異なるものが多く並んでおり、ここからの政権運営とEUとの関係がどのように展開することになるのかが注目されています。(さすがに、EUに対して債務放棄を求める公約は撤回したようです)
こういう事態になると、ギリシャのEU離脱騒ぎでユーロが散々売り込まれた時期を思い出しますが、この材料がまたしてもEUの大きな火種となってユーロ売りにつながるかも気になるところです。
イタリア債券は既に売り拡大状態
さて、この政権の誕生が報道されたことで18日のイタリア債券市場は大きく売り込まれることとなり、長期利回りは7か月ぶりに急上昇しています。
これは新政権により歳出拡大懸念が高まったことが背景にあり、財政赤字がさらに大きなものとなって手に負えなくなることを市場が非常に懸念しはじめていることがわかります。
もともと、この2政党が最初に掲げていた公約は、ECBに対して債務放棄(日本円で32兆円ほど)を求めるトンデモ公約や、EUからの離脱も可能となるように法律を変えようとしていたり、当初の連立草案がロイターにより報道されたことで混乱が広がりました。(その後の市場の反応をみて、草案の撤回に躍起になったようですが)
また今回この二政党は実際に政権を運営したことがないだけにこの先どのような展開になるのかが危惧されるところです
EUとは今後しばらくもめることになりそうで、ユーロが売られる大きな材料にもなりかねない状況です。
ブレグジット選挙以来、EU加盟国の離脱話というのは英国以外には見当たりませんでしたが、イタリアにこの連立政権が誕生することでまたしてもこのリスクが再燃することになりそうですね。
今年後半はユーロ圏の動向にも注目
今年前半の市場の材料はもっぱら米国のトランプ大統領の動向が先導してきた感がありますが、今年後半からはあらためてEU圏に注目が集まる可能性もでてきそうです。
そもそも世界中で2016年あたりからポピュリズムが席捲するようになった背景としては、グローバリゼーションに対する反動が各国で顕在化していることが挙げられます。
すでに米国はトランプが登場してウルトラ保守主義を展開しはじめていますし、英国でもブレグジットへの準備が着々と進んでいる状況です。
EU各国ともに移民に対する規制を唱える勢力が大きく支持されるようになっており、各国の国民が移民に対して嫌悪感を感じていることもこうした動きに拍車をかけているようです。
イタリアはまがりなりにもEUで三番目に経済の大きな国ですからこの国が改めてEU離脱を唱えた動きを強めることになると、またしてもEUという地域連合の維持に大きな問題が生じることになりそうな点が、非常に気にかかります。
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