
値動き以外であなたに損失を与える原因
FX取引のリスクというと「値動き予想が外れた」ことに起因する価格変動リスクなどがよく挙げられます。
しかし、こうした「市場」のリスクだけではなく、FX業者に起因するリスクがあることは、少なくとも表の議論ではあまり取りざたされません。
あなたが値動きに一喜一憂している裏で、FX業界で起きているある事実を知ると、あなたは怒りに震え、憤りを感じるかもしれません。
これから数回にわたって、FX業界の舞台裏について押さえておくべき基礎知識から、具体的な対処方法までわかりやすくご説明します。
第1回は、FXの知られざるリスクについてご説明します。
スイスショックとロスカット未収金

2015年1月15日に、スイスフラン相場は大混乱となりました。
もちろんこの混乱の原因はスイスの中央銀行の発表であり、FX業者が引き起こしたことではありません。
しかし、不思議なことに(同じ取引をしていたとしても)、FX業者によって、いわゆる「ロスカット未収金」に関して、大きな明暗が分かれたのです。
※ロスカット未収金:強制ロスカット時に口座残高がマイナスになり、FX業者に対して負債を負うこと。
スイスフランの相場変動に係るロスカット等未収金発生状況
金融先物取引業協会は、1月15日スイスフランの相場変動に係るロスカット等未収金発生状況(速報値)について、国内のFX取引業者で未収金が33億8800万円発生したと公表しました。
未収金は個人顧客が19億4800万円、法人顧客が14億4000万円だった。件数は個人顧客が1,137件、法人顧客が92件。
FX業者は大きく2つに分かれている
FX業者は、大きく①国内業者と②海外業者とに分かれます。
両者の大きな違いは、ゼロカット制度を法律上採用できるか、ということです。
国内業者は、法律で顧客の損失を業者が補てんすることを禁止しているため(※)、ゼロカット制度を採用している業者はありませんが、海外業者の多くはゼロカットを採用しています。
※ゼロカット(顧客の証拠金がなくなると自動的にポジションを解消し、口座の金額以上の損失を発生させないこと)はFXの取引上難しく、通常いくらかのマイナス評価損益が発生します。ゼロカット制度は、そのマイナス評価損益分を業者が補てんしているという解釈が成り立つため、国内FX業者はゼロカットを採用しません。

したがって、海外業者を選んだ顧客の被害はあくまで口座資金まで、ということになりました。
と、ここまではよくあるお話なのですが、実は国内業者間でも大きな差があったことはあまり表ざたにはなっていません。
同じ国内FX業者間の対応の差
スイスフランショックという空前の相場変動を前にして、①レート配信を一時停止(フリーズ)したり、②スプレッドを数百ピプス単位で異常に拡大したり、さらに③強制ロスカットの執行が遅れたり、といったことを平然と行ったFX業者が存在しました。
上記のような業者は、ロスカット未収金発生口座数や1件当たりの金額が大きくなっており、他方で平常通りのレート配信を行った業者では、ほとんど平常通りにロスカットが執行されて大惨事にはならなかったところもあります。(業者名は伏せておきますが、FX取引をするなら誰でも知っている業者名です)
このように、対応が分かれた背景についてはFX業者の収益構造との関係が原因で、それは後の記事でご説明します。
経済指標発表とグレーアウト
雇用統計など経済指標発表はFXのビッグイベントです。
この際、スプレッドが拡大することはよく知られていますが、それに加えて「グレーアウト」という現象が発生することはご存知でしょうか。
つまり、レート表示がグレーになり新規注文も決済注文もできなくなるという状態に一時的になり、しばらくすると離れたレートでまた動き出すことです。
スリッページ発生でリスクだけを背負わされる
似たような現象としては、いわゆる「くるくる詐欺」といって、注文ボタンを押しても読み込み中状態が長時間継続し、かなり大きなスリッページが発生するというものもあります。
※スリッページとは自分が意図した値ではなく、離れた値で約定してしまうこと。
これは、トレードをする側にとってメリットは何もなく、相場に対して行動がとれなくなるのに、リスクだけを背負わされるという理不尽な状態になります。
スリッページについては、約定力との関係で宣伝している業者もありますが、グレーアウトについては口座を開設してみるまで知らなかったという方も多いため、注意が必要です。

悪質FX業者によるスプレッド操作について
スプレッドというと国内業者のほうが海外業者よりも狭かったり、あるいは「ドル円なら0.3銭、ポンド円なら1.0銭程度」というイメージをお持ちの方は多いでしょう。
なぜならFX業者がそう宣伝しているからです。
しかし、実際には次のような実態があります。
①経済指標発表前後など、相場急変時にスプレッドが拡大するけれども、その度合いが頻度は業者によって大きく異なるということ。
②過去には、特に相場が急変していないのにスプレッドだけが以上に拡大して、それが原因となって強制ロスカットや、ロスカット未収金が発生したことがあること。
※「くりっく365の南アフリカランド円事件」が有名です。
③一部の業者では「ストップ狩り」といって、相場急変時などにかこつけてスプレッドを意図的に操作して強制ロスカットを誘発するという行為が行われていること。

トレーダー目線から業者を見る難しさ
FX初心者の方は、スプレッドや手数料、取り扱い商品などに注目されることが多いでしょうが、こういった「目に見える部分」だけではなく、各業者の負の側面に着目することは、あなたの無用な損失を減らすことにもつながります。
しかしながら、「(業者名) 評判」と検索するだけでは、つかみ切れません。
実際に、デモ取引や口座を開設して実際のレート配信を監視したり、実際にトレード配信をしている人を見てみたり、などといったより「業者の生の姿」に迫る姿勢が重要です。
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