
ハードブレグジットの危機!? メイ英内閣に暗雲
イギリスのメイ内閣が、今年に入って不祥事を連発しています。
現在、ブレグジットに離脱後のビジョンを作ろうとしているメイ内閣ですが、前途多難な様相を呈しています。
ブレグジットのやり方ひとつとっても閣内の意見統一をすることが難しいようで、このままだとハードブレグジット(強硬なEU離脱)になるかもしれない、という見方がでてきています。
イギリスには経済的なリスク(利上げ期待後退)だけではなく、政治的なリスクも大きくなってきたということであり、ポンド相場に対して二重の重しが出てきたといえます。
この記事では、メイ内閣の近況について執筆時点(2018年5月11日)の最新の情報、およびそれを踏まえたポンド相場への影響について説明します。
ブレグジット後のビジョンの争点とは?
ブレグジット後のビジョンについては、専門家によっても複数の見方があります。
このうち、特に意見が分かれる重要なポイントは以下の2つです。
・対外問題:EU離脱後のEUとの関係や、独自の経済圏確立の見通し
・対内問題:ブレグジット反対派による内部分裂への対処(主に北アイルランドの国境問題)
まず、対外問題についてですが5月2日にEU離脱後の関税パートナーシップ(Customs Partnership)について、閣内で合意が得られず否決されてしまいました。
さらに、対内問題についてでも北アイルランドの国境問題は解決のめどが立っていません。
加えて、メイ内閣そのものも今年1月8日に内閣改造を行って以後、閣僚の辞任が相次いでおり、最近では4月29日にラット内相が移民問題の不祥事で辞任しました。
このように、イギリス国内は混乱しており政治的なリスクは拡大局面にあるといえます。
ハードブレグジットとソフトブレグジット
2016年6月の国民投票でブレグジットが決定した瞬間には、ポンドは歴史的な暴落を経験しました。
ただ、2017年以降は対日本円、対ドルなどでポンドは買い戻される傾向が継続し、見る人によっては「不自然」ととらえられるくらいの堅調な地合いでした。
後講釈的になりますが、ポンドが2018年4月まで堅調地合いを継続してきた背景にあるのは、①過度なハードブレグジットへの反動や、むしろ②ソフトブレグジットへの期待感、にあったといえます。
つまり、投資家は不透明感を一番嫌いますから、ソフトブレグジット(周辺諸国と協調していく温厚なEU離脱)になるとポンド買いで反応し、ハードブレグジット(周辺諸国との軋轢を残したうえでの強硬なEU離脱)になるとポンド売りとなります。
今後もイギリスは、ハードブレグジットなのかソフトブレグジットなのかということに振り回されそうです。
メイ政権暗雲で政治リスク増大か!?
メイ政権は、今のところ閣内(国内)をまとめることがうまくできていません。
そもそも、イギリスという国は、日本などと違って「リーダーが右といったら右!」というようなトップの意見がそのまま全体の意見になるということはなく(BOEでもそうです)、メンバー全員が自分の意見を戦わせるという「民主主義」が機能しています。
ですから、メイ首相は閣内や国内に対して、自身の考えるブレグジット後のビジョンについて、しっかりと説明し、そして納得されていく必要があります。
しかしながら、現状メイ内閣はそれができておらず、むしろ相次ぐ閣僚の不祥事や、閣内不一致などによって、政権としての機能を果たせなくなってきています。
今後のポンド相場の見通しは!?
ポンドといっても、カウンター通貨が日本円なのかドルなのか、ユーロなのかで現在相場の置かれている状況は異なります。
ただ、特に最近政治リスクも経済のリスクも後退しつつみえるアメリカと比較して、イギリスの不安定さは際立ってきており、このことからポンドドルはさらに下落する可能性を見ておいたほうが良いでしょう。
ポンド円については、ポンドドルと底堅いドル円とのどちらに引っ張られるのかで展開が変わりそうです。
政治要素でトレードする場合には、政治的に最も不安定な通貨を売り、逆に最も安定している通貨を買う、という考え方が一般的ですが、現在のイギリスにもその考え方で臨むことをお勧めします。
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