
市場では、米国の中国に対する貿易赤字解消のための制裁措置が注目されています。厳しい内容が出ている割には水面下での交渉も行っているといった情報が錯そうしていますが、まだまだ制裁措置はこれからという見方もあり、想像以上に交渉とその決着には時間がかかるのではないかといった悲観的な見方も広がっています。
いずれにしてもトランプは大統領就任時に公言した貿易赤字による不公正を徹底して解消することを愚直なまでに進めており、必ずしも米国にとってはプラスにならないと思われることもとにかく赤字解消をベースにして強引に進めようとしている状況です。
米韓のFTAにおける為替条項もかなり厳しい内容
3月27日、米国は韓国とFTAの見直しで大筋合意した旨を発表しています。韓国は早々と米国に白旗を上げる形でほとんどの要求を飲むことを決断してしまったようですが、その中でもひときわ注目されることとなったのが、米国でも初めて採用した為替条項が盛り込まれたことです。
この為替条項とは米国への輸出拡大を狙った韓国からの通貨誘導を防ぐのが大きな目的であり、具体的には競争的な通貨切り下げを禁じる、金融政策の透明性と説明責任を約束するといった内容が明確に文書として織り込まれているのが特徴です。
対日交渉でもFTAの締結が目標となり為替条項が盛り込まれるのは必至
韓国は米国からの自動車輸入を年間6万5000台などと具体的な数字を示して増加させることを確約しているようですが、米国が日本に同様の米国車輸入を迫ってくることは間違いなく、それ以外にも農産物の自由化など譲歩せざるを得ない条項をつきつけてくることはもはや火を見るよりも明らかな状況です。とくに米韓のFTAに盛り込まれた上述の為替条項が盛り込まれることは間違いなさそうで、今後こういう締結が現実のものになればドル円は政治的にドル高円安というものが示現しなくなる可能性が極めて高くなりそうです。
過去5年間のアベノミクスでは、間違いなく故意にドル円を円安誘導することで、企業業績の底上げとデフレからの脱却を目指してきましたが、こうした条項の入った条約を締結した場合、もしくは為替だけに限った条約が締結された場合、もはや日本政府は口先介入すら公式にはできなくなることは間違いなく、それを見越した投機筋からの円高に向けた仕掛け売買がでることも十分に考えられそうで、ここからのドル円相場は相当な注意が必要になりそうです。
もともと政治的にレートの水準が決まってきたドル円
ドル円の過去40年近い動きを見直してみますと、1985年のプラザ合意以降ほとんど米国の思惑通りの為替水準で推移してきた特別な通貨ペアであることをいまさらながらに認識することができます。本来中央銀行が定めた政策金利の差が為替に反映されてしかるべきものですが、90年代のドル円は金利とは全く関係なく円高が進んだ経緯もあり、日米金利差と為替に相関性がでるようになったのはここ数年の話といってもいいぐらいです。
それだけに米国からの圧力を受ければ自ずとドル円はドル安方向に動くリスクがきわめて高く、一体どのレベルがその落ち着きどころになるのかが大きな注目点となりそうです。
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