
日米首脳会談は予定通り4月17.18日にフロリダ州パームビーチで実施され、事前に心配された米国側がらの貿易赤字の解消に関する厳しい指摘も表面上は強いものがないままに無事終了となり相場は安堵感からか株も為替も値を戻す展開となっています。
事前段階では米国からの厳しい要求を突き付けられるリスクを心配してドル円は106円台へと下落する場面がありましたが、共同記者会見を経て107円台中盤まで値を戻す展開となっています。
ただし今回は厳しい内容にはならなかったものの交渉としては継続協議となる貿易問題においては、日本側の期待と米国側の目論見に齟齬が目立つのも事実で、今後もドル円が円高に向かう材料を残した形となっています。
TPP再検討のトランプ発言は結局国内食肉業者へのポーズか
事前段階でトランプ大統領がTPPへの再参加の検討を示唆したことから、日本にとってはTPP再加入を巡って米国と交渉を行うことが期待されましたが、どうもTPPでビジネスを失う米国内の食肉業者へのポーズだった可能性が高く、結果的には現状締結内容ではTPPに戻らないことを大統領自らが明言し、むしろ日本とはFTAの締結を目指す考えを示したことから、今後日米間ではFTAを締結するかどうかが最大の焦点となってきました。
今回の首脳会談の席上日本側がどこまでFTAの締結に積極的な姿勢を示したのかはまったく明らかになっていませんが、今後の米国の発言でその概要が徐々に鮮明なものになってくるものと思われます。
米国はすでに韓国とのFTAの締結にこぎつけていますが、この契約上では為替条項が盛り込まれ、自国通貨安を招くような言動が一切禁止される内容となっているだけに、日本にとってはこの条約締結が実施されれば事実上口先介入もできなくなりますし、PKO軍団が外郭的に行ってきた疑似介入的なドル円の買い付け行動などにも大きな影響がでることが予想されるだけに、どのような二国間交渉が展開するのかが非常に注目されることになりそうです。
為替報告書では引き続き日本が監視対象に
日米首脳会談に先立って米国財務省が4月13日に発表した半期の為替報告書では日本が引き続き監視対象国として指定され実質実効レートだけでなく名目レートでの「円安」も指摘される状況となっています。この報告書の指摘通り日本円が25%程度円安であるという内容をそのまま受け取った場合、ドル円は現在の107円程度から実に80円レベルまで円高にしないことには米国の指摘をクリアできない状況となるだけに、米国が実際ドル円の水準をどのあたりまで下げることを要求してくるのかが非常に大きな問題となりそうです。
韓国は米国製の自動車の輸入を台数ベースでコミットするといったかなり大胆な条件の受け入れをしていますが、日本国内で考えた場合今後EVのような新たな輸送用機器が普及するのでない限り米国製の大型を中心とした乗用車の輸入をコミットすることは極めて難しく、農産物の自由化でバランスをとった場合国内の農家や食肉業者が全滅しかねないだけに、為替水準そのもので調整をとらざるをえない状況に陥ることも考えられ、非常に危惧される状況といえます。
ドル円は引き続き政治的な材料を織り込む通貨に
思い起こせば1985年のプラザ合意以降、ドル円はきわめて政治的にそのレート水準が規定されてきているだけに貿易問題の解消に為替が利用されるリスクはかなり高くなり、ここからの快活方法の模索が急がれます。米国は11月に中間選挙を控えているだけに一定の成果をそれまでに出すことが求められそうで、今年後半に向けてはドル円はなかなか上昇することができない時間帯にさしかかることになりそうです。
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